Andrew 遺書は一回書けばいいというものではなく、状況に応じて何回も書き換えていくということが大事です。遺書に積もった懐を吹き飛ばして、いまの自分のニーズに合った内容になっているかどうかを時々確認する必要があるでしょう。
最後の24時間の症状や兆候
西立野 話は元に戻りますが、最後の24時間に気を付けるべき症状や兆候は何でしょうか。
Andrew Wendyが先ほど最後の24時間の症状・兆候について話しましたが、必ずしもこれが全部出てくるわけではありません。最も重要なものとしては?経口摂取量が減る、つまり食べ物とか飲み物に関心がなくなってしまうということだと思います。?意識レベルが落ちるということがいつもではありませんけれども頻繁に認められます。それから?身体の末梢の部分が冷たくなる、?呼吸が速くなる、頻呼吸のみならず呼吸がイレギュラーになってしまうということも挙げられます。?末期の胸部の感染も出てくる、あともう一つ大変興味深くそして重要なこととして患者さんがよくいわれることですが、?もう最悪の気分、非常に気分が悪いというようなことを言います。なぜそのように思うのかその機序はわからないのですけれども、心拍出量が落ちてきていることと関係があるのかもしれません。
Andrew 私はそうは思わないのです。私は意識がなくなる前の痛みの刺激のレベルというのは意識がなくなったあととそれほど変わらないのではないかと仮定しています。ですからその仮定に基づいて鎮痛剤を与えるレベルというのは意識がなくなる前と同じレベルに保つけれども、その投与する経路を変えるようにしています。もしも患者さんがいずれにせよ死ぬという軌道に乗ってしまっているような場合、そういう場合には患者さんと双方向のコミュニケーションができなくなってしまったからといって、投薬のレベルを変えるというのは論理的ではないと思うのです。それから患者さんの状態をよく見て患者さんに不快感がないかどうか、何か苦しいような状態がないかどうかはできるだけ読み取れるように患者さんの状態は注意して見るようにしています。意識のない患者さんであってもうなるような感じになったり、ちょっと痛いようなしぐさをしたりというようなことがあると思いますから、そういったものを捉えると不快な状態であるかどうか、痛みがある状態かどうかを知る手がかりとなると思います。